走×旅 ~Running Journey~
走ることとか、旅することとか、戯言とか。
オピニオン

シンプルを、徹底的に積み重ねる。大迫傑選手の自伝書に学ぶ【書評】

 

どーも。
ウエハラです。

さてさて、読了しましたよ。
こちら、マラソンランナーなら必読でしょう。

『走って、悩んで、見つけたこと。』
大迫 傑

現役プロランナーであり、フルマラソン日本記録保持者・大迫傑選手の自伝書。

現役のトップランナーが本を出すって珍しいですよね。
流石、大迫選手。
半端ない。

出版されたのは、2019年8月末。
9月15日には東京オリンピックのフルマラソン選手選考会であるMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)が開催されます。
そのMGC開催直前のタイミングでの出版。
このタイミングだからこそ語れる彼の言葉が綴られていました。

正直、彼の言動を常にチェックしている人にとっては、特に目新しいことは書いていないかもしれません。
というのも、彼はいつも当たり前にすべきことを淡々と積み上げているだけだと言い続けているからです。

でも、彼の凄いところは口だけではなく、実際に行動しているところ。
当たり前にすべきことを徹底的にやり通しているということ。
そして、プロとしての結果を出し続けているところ。

大迫選手の言葉をただの言葉として捉えてしまっては、「なんだ、当たり前のこと言っているだけじゃん」で終わってしまうかもしれません。
しかし、彼の積み重ねてきた過程と努力から紡ぎ出された言葉は、もはや当たり前のものでは決してありません。

マラソン、走る、というシンプルな行為を極め続けている人間のみが発することが出来る言葉の力があります

ということで、書評していきまーす。
(ネタばれ注意!)

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この書評記事の要点(3つ)

①無駄なものを省き、必要なものだけで身を固める。

今に集中し、プロセスを積み重ねる。

③最終的にたどり着くのは、自分の心の声。

大迫 傑(おおさこ すぐる)選手とは・・・

大迫 傑(おおさこ すぐる)選手は、僕より1歳年上の世代(1991年生まれ)で常に日本のトップレベルで走ってきたまさにエリート。
歳が近い僕ももちろん、彼の活躍や言動は常にウォッチしてきました。

特に衝撃的で、「この人は別格だ」と印象付けられたレースは、2009年全国高校駅伝で大迫選手が1区区間賞(29分06秒=日本人歴代2位)を獲った時。

大迫選手は淡々と自分の走りを貫き通しやがて先頭に出ます。
そして、いつの間にか周りの実力のあるランナー達は次々と脱落。
一方、大迫選手は力強いリズムを刻み続け、美しいランニングフォームで都大路のエース区間を駆け抜けました。
その鮮やか過ぎる走りは“完璧”としか言いようがありませんでした。

*2008年全国高校駅伝
当時大迫選手は高校2年生で7区区間賞
在籍していた佐久長聖高(長野)日本最高記録優勝
↓↓↓

 

早稲田大学時代(2010~2014)には、10000mの日本学生記録を更新(27分38秒31)
箱根駅伝をはじめとする大学駅伝での活躍は周知の通り。
当時の学生ランナーの中では明らかに頭一つ抜けた存在でした。

大学卒業後(2014~)は、日清食品グループを経て、アメリカ・オレゴン州の『ナイキ・オレゴンプロジェクト』に加入。
当初はトラック種目でスピードを磨き、2015年に5000mで日本記録更新(13分08秒40)
2016年の日本選手権では10000mと5000mで2冠
翌年2017年の日本選手権でも圧倒的な力を見せつけ、10000m優勝(2連覇)

*2017年日本選手権10000m優勝(2連覇)
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その後、主な活躍の舞台をトラックからロードへと移します。

2017年4月、初マラソンとなったボストンマラソンでは2時間10分28秒3位
このレースでの1位はロンドン世界陸上金メダルのジェフリー・キルイ(ケニア)、2位はリオデジャネイロ五輪銅メダルのゲーレン・ラップ(アメリカ)
世界トップレベルのランナー達と互角に渡り合い、タイム以上の強さ、マラソンへの適性を見せました。

続く2017年12月の福岡国際マラソンでは2時間7分19秒(当時日本歴代5位)3位
ボストンマラソンの結果が偶然ではないことを証明し、さらに翌年2018年10月のシカゴマラソン2時間5分50秒日本新記録を樹立。(2018年フルマラソン世界ランキング22位)
大迫選手は、日本人で初めてフルマラソンを2時間5分台で走ったランナーとなりました。

*2018年シカゴマラソン、日本記録更新(2時間5分50秒)。
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とまぁ、こんな感じで、とにかくもう実績がずば抜けているんです。

でも、僕は彼の凄いところはその実績を出すまでに積み重ねてきた過程だと思っています。

つまり、泥臭い練習
妥協なき努力と継続
覚悟と行動

アスリートはレースの結果ばかりが注目されがちですが、彼らの神髄は普段のたゆまぬ努力そして、確固たる哲学だと思うのです。

それに加えて、大迫選手は“プロランナー”という立場も影響しているのかもしれませんが、思ったことをズバズバと言うタイプ。
他人へのリスペクトはするが、媚びは売らない。

そんな真っすぐな姿勢が魅力でもあるランナーです。
半端ない。

 

『走って、悩んで、見つけたこと。』

まず、この本を全部読んで思ったことを一言で言うと・・・

「なんてシンプルな考え方ができる人なんだろう」

そして、大迫選手はそのシンプルな哲学を言行一致で積み重ね続ける
ただそれだけ。

“ただそれだけ”だけど、それが最も本質的なことなのです。

 

①無駄なものを省き、必要なものだけで身を固める。

シンプルな思考ということはどういうことでしょうか。

それは、

無駄なものを省く

必要なものだけを取り入れる

ただこれだけです。

大迫選手はこのように書いています。

1日24時間という制約がある中で、競技においては、いかに必要のないものを取り除いて、必要なものだけで身を固めていくか、無駄を省いていく作業がすごく大事になってきます。
そう考えると他人と協調したり、他人に合わせ、寄り添って練習をするというのは、僕にとってはなんのメリットもない、無駄な作業に思えてしまうのです。

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

「他人と協調することは無駄」

「他人に合わせることは無駄」

無駄無駄無駄。
DIOも顔負けの切り捨て術。

無駄は徹底的に省くのです。
それがまず大事。

では、逆に「必要なこと」とは何なのでしょうか?

今の僕であれば、最大の目標はMGCです。
そこで100%の力を出すために、今の自分は何をしなくてはいけないのかということを考えているだけです。

~中略~

ではMGCに向けて、どんなプロセスを考えているかというと、一番大事なのは単純に故障なく練習するということ

~中略~

特別なことは何もしていなくて、目標を達成するためにいかに無駄なことをしないか
すべての決断は最終的な目標のためにある

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

「一番大事なのは単純に故障なく練習するということ」

「ハードな練習を継続すること」

「スピードをつけて、力をつけて、勝てる準備をするだけ」

 

シ、シンプル・・・!!

そうなんです。
本当に大迫選手は特別なことは言っていない

当たり前のことを徹底的にこなしているだけなんです。


外野からのコメントの中には、
「つまらないことしか言えない選手だな」
というものがあったりもしますが、きっと本質は“つまらない”ことなんですよね。

なにか特別な魔法があるわけではないんです。
シンプルに考え、当たり前でつまらないことを積み重ねていくだけ

でも、それが最も難しく、尊いことだと思います。

ただ、あまりにもシンプルを極めすぎるとデメリットもあるようです。

団体スポーツや普段の生活だと、人間関係の中で様々なことを解決する部分多いと思うのですが、マラソンは一人で走る時間が長い分、自分を見つめて考えざるを得ない
これはマラソンの魅力のひとつではありますが、一方で社会性をすごく失っているんじゃないかと思う時もあります(笑)。
ただ、あえて失うことも今の僕には必要なのです。

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

「社会性を失う」・・・!!

あぁ、レベルは大きく違えど、僕も思い当たる節があります。
ランナーって自分の世界に入り過ぎるあまり、社会性を失いがちですよね。

それって普通は「まずいんじゃね?」って思うんですが、
それでも、大迫選手は「社会性を失う」ことすらも今の自分には必要だと考えています。

この徹底ぶりが凄いんですよ。
分かります?
半端ない。

 

②今に集中し、プロセスを積み重ねる。

では次に、僕がこの本を読んで印象的だった2つ目のポイント。

それは、大迫選手はプロセスを非常に大事にしているということ。

結局レースは2時間で終わってしまうものです。
それよりもその日までにやってきたプロセスの時間の方がずっと長いし、今後の自分に生きてくる
それがマラソンにおいては大事だし、魅力だと思っています。

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

プロランナーである以上、常に結果が求められる世界ではありますが、それがゆえに大迫選手はプロセスを大事にしています。

それはつまり「今という瞬間を大切にして、集中すること」そしてそれを積み重ねること

きちんと今を積み重ねていれば、レースの直前に自分を信用することができます
練習さえきちんと積めていればあとはタイミングの問題です。
たまたま合うこともあれば、合わないこともある。
でもそのときのために常に準備をし続けていることが大事。
最大のチャンスはいつ来るか分かりません。
だからこそ過度な期待をせずに、今という瞬間を大切にして、集中してやっていく

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

2019年2月。
大迫選手は、東京マラソンに出場しました。

前年に日本新記録を出していたことから、メディアや世間からは日本記録の更なる更新など大きな期待が寄せられていました。

しかし、結果は途中棄権(DNF)
雨風が強い真冬の日で厳しいコンディションの中、大迫選手はこのまま走り続けて得られるメリットと、走り続けることで被るデメリットを天秤にかけ、あくまで冷静な判断でレースを止めました。

僕はレースの細部をあまり振り返りません。

~中略~

学ぶべきはプロセスで、レースについてはただの結果でしかないので、何の参考にもならないと思っているんです。

~中略~

レースはひとつひとつの環境も違いますし、そのときのレースがどうだったかを比較する必要もありません。
周りは変わっていくかもしれないけれど、その瞬間瞬間を生きているのだから、次に起こることに対して向き合って、今を生きることに楽しさや意義があると、僕は思っています。

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

周りに惑わされず、常にその瞬間、自分がやるべきこと、向き合うべきことをちゃんと理解していれば、後はそれをやるだけです。

ネガティブな感情が押し寄せてきても一旦状況を冷静に判断し、またシンプルな答えを導き出す
そして、それを愚直に遂行する

これが大迫選手の強さだと思います。
半端ない。

 

③最終的にたどり着くのは、自分の心の声。

ランナーであれば納得してもらえると思うんですが、
走っている時間 とはつまり、 自分自身と対話する時間
なんですよね。

最終的にたどり着くのは誰かの意見ではなく、自分の心の声
そうやってたどり着いた答えは結局、いつも同じようなところで落ち着くのですが、どの課題においてもそのプロセスを踏まないと僕は答えにたどり着かない。
簡単に答えは出ないけれど、走りながら自分自身と対話をすることで、徐々に納得のいく答えを出しています

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

「自分自身との対話」なんて大層な言い方だと、常に何か哲学的なことでも考えているのかと言えばそうではありません。

その日の夕食のことを考えたり、仕事のことを考えたり、週末の予定を考えたり。

逆に、かなり深いトピックを考えることもあって、
「将来のこと」だとか、「人間関係」だとか、「生きる意味」だとか、そういったことについて考えることもあります。

でも、その中で共通して言えることは「自分の心の声に耳を傾けることができる」ということ。

そうやって走りながら、自分の心の声を聞いて考えるということに意味があります。

些細なことから大きな問題まで、気づけばいつも僕は結局同じプロセスを踏んでいます。
そうやって走りながら見つけた答えは、今のところ僕にとっては正しいものであると信じています。

引用元:『走って、悩んで、見つけたこと。』 / 大迫 傑

誰かに教えられたことではなく、何となく押し付けられた常識でもなく、本当の答えは自分自身が知っています

自分の頭で考え、心で感じるというプロセスを踏んで得られた答えこそ正しいのです。

それは時に、世間一般の常識とは違うかもしれないし、やはりそれが間違いだったと気付くときがくるかもしれません。

しかし、自分で考えるというプロセスを踏んだ上での答えならば、どういう結果になったとしても少なくとも自分自身は納得できる

誰かのせいにはしない

そこが大事だと思うのです。
半端なく大事。

 

まとめ

では、最後にもう一回まとめます。

 

①無駄なものを省き、必要なものだけで身を固める。
シンプルに考えて、実行するのみ!

②今に集中し、プロセスを積み重ねる。
その瞬間に自分が向き合うべきことを見失わない!

③最終的にたどり着くのは、自分の心の声。
自分の心の声を聞き、自分の頭で考えて導き出したものが正解。

 

冒頭でも書きましたが、普段から大迫選手の言動をチェックしている人であれば、彼が普段から発言していることと変わらぬ内容で目新しくはないかもしれません。

しかし、雑誌やネット記事、テレビのコメントなど、切り取られた情報や発言を仕入れるだけでは誤解が生まれたり、真意が見えなくなってしまう場合がありますからね。

そういう意味では、本という形でその時点における大迫選手の考えが一貫性のある情報としてまとめられたことは良いことだと思います。
MGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)直前のこの時期こそ読む価値あり。

ぜひぜひに。
半端なくおすすめ。

『走って、悩んで、見つけたこと。』
大迫 傑

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