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◆自分の「適正ペース」知ってる?
あなたは自分の「適正ペース」を知っていますか?
もし、あなたがマラソンで目標とする記録があるのであれば、どれくらいのペースで練習すれば良いか?
つまり、あなたにとっての「適正ペース」を知っておくことは必須です。
マラソンの練習というのは、決して走るペースが速ければ速いほど良いわけではないんです。
速く走る練習で得られる効果もありますし、ゆっくり走る練習で得られる効果もあります。
つまり、それぞれの練習で鍛えられる身体スキルは全く異なるというわけです。
だからこそ、それぞれの練習の意味を理解し、それに応じた「適正ペース」で走ることが効率の良いマラソン練習ということになります。
特にランニング初心者は、自分の「適正ペース」を知らないが故に、必要以上に速く走り過ぎてしまいがち。
そのせいで、過剰な疲労が溜まり練習が継続できなくなる場合が本当に多いです。
当然、無理して速過ぎるペースで走れば、必要以上に苦しい思いをしますよね。
その結果、「ランニングは苦しいもの」というイメージがその人の中に出来上がるわけです。
んん~
何だか悲しい。
みなさん、そんなに頑張らなくていいんですよ!!笑
実は、マラソン練習において苦しい思いをするほど速く走る練習の必要量はそれほど多くありません。
「定められた距離を、自分が設定したペースで、いかに余裕を持って走れるか」
が肝心。
マラソンの本質は「ラクに走ること」なんです。
余裕がなく、もがきにもがいて42.195km走り続けるのはどのレベルのランナーであっても苦行です。
「42.195kmという距離を、自分が目標とするペースで、いかにラクに走り切るか」
よっぽどストイックなアスリートを除いては、この考え方で良いと僕は思います。
だから、まずは自分にとっての「適正ペース」というものをしっかり把握しましょう。
◆『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』を解体する
さて、ではどうやったら自分の「適正ペース」が分かるのか?
僕はそれなりに多くのランニング関連書を読み漁ってきたが、その中でも“バイブル”と言える本がいくつかあります。
その一つがこちら。
↓↓↓
(日本語版)
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
ランニング業界では、もはや古典とも教科書とも言えるマラソントレーニング理論書です。
著者のジャック・ダニエルズは『ランナーズ・ワールド』誌上で「世界一の指導者」と評され、多数の世界トップ長距離走者を世に輩出した人物。
一言で言えば、めちゃくちゃ腑に落ちるでした。
初めて読んだときは、今まで何となくの経験で練習してきたことが理論で裏付けされた感覚を覚えました。
「ああ、だからあの練習は効果があったのか」
とか
「道理であの練習では結果が出なかったわけだ」
とか
あらゆる経験が数値的データや科学的根拠によって証明され、この本を読んでからはよりトレーニングの目的を理論的に考えながら練習するようになりました。
大袈裟な言い方ではなく、
ランナーであれば一度は読んでおきたい1冊ですね。
僕のマラソントレーニングの考え方のベースはここにあると言ってもいいです。
おすすめします。
◆まずは『VDOT表』で自分の走力レベルを知る
まずは、自分の走力レベルを把握しましょう。
自分の現状把握ですね。
まず己を知るべし。
そこで、活用するのが、ダニエルズ理論の代名詞とも言える
『VDOT表』
これで、あなた自身の走力レベルを計っていきましょう。
「え、走力レベルなんて、マラソンのタイムを測れば分かるじゃん」
と疑問に思う人もいるかもしれませんが、
マラソンのタイムは“42.195kmという距離をこれくらいのペースで走りましたよ”というだけの1つのデータに過ぎません。
それに対して、VDOTはもっと属人的な走力レベルを表す指標です。
つまり、フルマラソンに限らず、その他の距離においてあなたがどれくらいのタイムで走れるかを予測できる指標というわけです。
例えば、あなたが自分のVDOT数値を把握したならば、1500m、5000m、10km、ハーフマラソンなど様々な距離に対応したタイムが予測できます。
えっ、まじで?
っていうことで、まずは『VDOT表』を見てみましょう。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第3版 / ジャック・ダニエルズ
p.80
では、僕を例にいきます。
僕のフルマラソンの自己ベストは、2時間37分30秒。
つまり、上記の『VDOT表』によれば、
僕のVDOTは、62~63の間となります。
では、このVDOT62~63という数値を持つランナーが、フルマラソン以外の種目でどれくらいの記録を出せるのか、その予測数値を確認してみましょう。
1500m ・・・ 4分27秒~4分24秒
5000m ・・・ 16分34秒~16分20秒
10000m ・・・ 34分23秒~33分55秒
ハーフマラソン ・・・ 1時間15分57秒~1時間14分54秒
ほうほう、なるほど。
確かに僕の場合は、概ねこんなもので合っていると思います。
みなさんも、フルマラソンの自己ベスト記録を基に自分のVDOTを調べてみてください。
そこから、5000mやハーフマラソンでの予測タイムが分かります。
ちなみにVDOTは、ランナーの走力を決定する重要因子の一つである
「VO2max (最大酸素摂取量)」
を基に計算された数式です。
「VO2max」とは、体重1kgあたりの1分間の酸素消費量を意味し、
VO2max = 〇〇ml/kg/分という形で表されます。
つまり、一定時間でいかに酸素を多く取り込めるかということ。
そして、VO2maxが高く、多くの酸素を取り込めるということは、それだけ大きなエネルギーを発揮することが出来るということになります。
ランニングにおいてはこれは“スピード”を測る重要な指標です。
◆VDOT計算ツールを活用すべし
なお、ネット上にも非常に便利なツールがあり、それがこちら。
↓↓↓
The Run S.M.A.R.T. Project
この計算ツール(英語)を使うことで、なんとあなたのVDOT数値が一発で分かります。
使い方は簡単。
①種目を選ぶ
↓
②自己ベストを入力する
↓
③VDOTが計算される

The Run S.M.A.R.T. Project
僕の場合、フルマラソンの自己ベスト2時間37分30秒というタイムを入力したところ、“62.6”というVDOTが算出されました。
先ほどのVDOT表から得られた結果と同じですね。
では次はちょっと角度を変えてみましょう。
僕の5000mの自己ベストを基にVDOTを計ったらどうなるのでしょうか?
ということで、
5000mの自己ベスト15分42秒というタイムを入力してみます。
(2011年時の記録なのでだいぶ古いデータですが・・・)

この結果、算出されたVDOTは“66”。
5000mの自己ベストを基に算出したVDOTの方が、フルマラソンの自己ベストを基に算出したVDOTよりも高いという結果になりました。
おおー。
ここは高い方のVDOTを信じたいところですね。笑
では、このVDOT66という数値が、各種目においてどれくらいのタイムに相当するのか確認してみましょう。
“Equivalent” (相当性)
というタブをクリックします。
↓

これで、VDOT66の走力を持つランナー(つまり僕)が各種目でどれくらいのタイムを出せるかが予測できました。
この計算結果によると、僕は
フルマラソン ・・・ 2時間30分32秒
10km ・・・ 32分35秒
1500m ・・・ 4分13秒
くらいのタイムを出してもおかしくない、ということになります。
(元データの5000m15分42秒というタイムの再現性はさておき)
ほほーう。
フルマラソン2時間30分32秒ですかぁ。
僕の実際のフルマラソン自己ベストは2時間37分30秒ですので、このVDOT計算式によれば、
僕は5000mの自己ベストに対してフルマラソンの自己ベストがやや遅いのでは?
っていうことになります。
まあしかし、逆に言えば、フルマラソンをもっと速く走れてもおかしくないということにもなります。
このように、VDOTを使って自己分析が出来るわけですね。
もう一度載せます。
こちらであなたのVDOTが測れます(無料)。
↓↓↓
The Run S.M.A.R.T. Project
さぁ、あなたのVDOTはいくらでしたか?
◆得られたVDOT数値を基に自分の「適正ペース」を知る
では次に、VDOT計算式から得られたあなたのVDOT数値を基に、あなたの「適正ペース」を確認してみましょう。
“Training” (トレーニング)
というタブをクリックします。
↓

The Run S.M.A.R.T. Project
さぁ、出ました出ました。
僕の場合 (5000m15分42秒で計算)、以下が「適正ペース」となります。
◆VDOT66の人の「適正ペース」◆
・Easy イージーペース ・・・ 4分21秒~4分06秒 /km
・Marathon マラソンペース ・・・ 3分34秒 /km
・Threshold 閾値ペース ・・・ 3分23秒 /km
・Interval インターバルペース ・・・ 3分08秒 /km
・Repetition レペティションペース ・・・ 2分53秒 /km
「え、適正ペースってこんなにいくつも種類があるの?」
と疑問に思う方もいるかもしれませんが、その通り。
「適正ペース」とはいくつも種類があり、どういう練習をするかに応じて使い分けます。
この イージー / マラソン / 閾値 / インターバル / レペティション というペースの分類の仕方も『ダニエルズ理論』の代表的な考え方ですが、ここではあまり深く触れず別の記事で書いています。
*それぞれの「適正ペース」を解説した記事はこちら
↓↓↓

自分の「適正ペース」の中で、ここで最低限覚えておきたいのは、“閾値ペース”です。
これは一般的には“LT( 乳酸性作業閾値)ペース”とも呼ばれ、20~30分間継続できる運動強度のことです。
このペースを超えると、人間の体内では乳酸の分解が追い付かず、乳酸が蓄積され始めます。
それから、やがて身体が思い通りに動かなくなるのです。
はい、みなさん。
身体が痺れて動かなくなる経験、ありませんか?
僕もよくあります。
特に練習不足の時に無理なペースで走った時はよくなりますね。
これは“閾値ペース”よりも速いペースで走っているということなんです。
冒頭にも述べましたが、ランニング初心者は頑張り過ぎて苦しい思いをしがちです。
これも、“閾値ペース”よりも速いペースで走っているということが原因であることが多い。
しかし、初心者が普段のランニングを行うにあたっては“閾値ペース”ほど速く走る必要はありません。
長年運動をしてこなかったランニング初心者に関して言えば、“イージーペース”でのランニングを積み重ねるだけである程度のレベルまで走力は上がっていくでしょう。
そうです。
普段走るペースはもっと遅くていいんです!
要するに、自分の「適正ペース」を把握して練習することで、よりラクに、より効率的に走力をアップさせることが出来るというわけです。
何度も言いますが、走るペースは速ければ速いほど良いわけではありません。
頑張る方向性を間違えないようにしましょう。
◆まとめ
では、まとめ。
自分の「適正ペース」を知るには、以下の流れで!
↓↓↓
①ダニエルズの『VDOT表』もしくは『VDOT計算ツール』を使って、自分の走力指標である『VDOT』を把握する。
↓
②算出された『VDOT』に対応する
各種「適正ペース」を確認する。
↓
③各種「適正ペース」の内、
最低限“閾値ペース”は把握しておこう。
この“閾値ペース”を底上げしていくことが
走力アップの重要な要素となる。
っていう感じです。
じゃあ、最後に宣伝いきますね。笑
もっと『VDOT表』の仕組みを理解したい人は
ぜひ『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』を読むことを激しくおすすめします。
しかも、『VDOT表』はあくまで、ランナーの走力を予測する指標の一つに過ぎず、ランナーの走力の決定因子はまだいくつもあります。
そのあたりもしっかり解説されているので、もっと知りたい方はぜひ。
VDOTは、この本に書かれてることのほんの一部でしかありません。
マラソントレーニングって奥が深いんですよ~
本当に。
繰り返しになりますが、ランナーであれば一度は読んでおいた方が良い本だと思います。
*購入はこちらから
↓↓↓
(日本語版)
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』
*続き記事はこちら
↓↓↓

*以下は姉妹サイト
『サクッとサブスリーしちゃおうぜ【マラソンサブ3研究室】』
の関連記事です。
(こっちはより一般向けに書いているマラソン専門ブログです。)
興味ある方は、併せてお読みください〜
↓↓↓
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