
◆和水2日目
夜が更けた。
外は柔らかな雨が、やさしく降っているようだ。
スナフキンズの男子ドミトリー部屋の中で目を覚ました。
7時過ぎ。
僕にしては遅い目覚め。
いつもは5時に起きているので、久しぶりにこんなに遅い時間に目を覚ました。
心からくつろげている証拠だろうか。

雨がサラサラと地面を撫でるように降っている。
あまり寒くはない。
そして、なんと静かな朝だろう。
かすかに感じる程度の雨音と、たまに通る車の音が聞こえるくらいで、あとは静寂だ。
スナフキンズの館内も静まり返っている。
僕は靴を履いて玄関の外に出た。
大して気合も入れず、ダラダラとゆっくり走り始めた。
30分程走っていると身体がポカポカとしてきて、気分が良くなってきた。
初めて走る道を走っている時は楽しい。
トレーニングという意識はあまり持たず、初めて足を踏み入れる地を一歩一歩確かめるように、じっくりと走る。

◆朝ダラダラ
朝ランから帰ってくると、朝食の準備が整っていた。
朝食は、昨日のお鍋の残りを使ったおじやだった。
普通に美味しかった。
全く気取ることなく、シンプルに美味い。

朝食を食べながら、ダラダラした。
朝食を食べた後もダラダラした。
のんびりと会話しながら穏やかな時間をみなと共有する。
珈琲焙煎職人であるヨッシーさんが珈琲を淹れてくれた。
1杯目は、苦味があるけど飲みやすいコーヒーだった。
2杯目は、少しフルーティというか爽やかな味わいのコーヒーだった。
コーヒーを飲みながらホッと一息ついて、ヨッシーさんがコーヒーについていろいろ教えてくれた。
ニカラグアがなんちゃらかんちゃら。。。
とにかくコーヒーは奥が深いらしい。
珈琲について目をキラキラと輝かせながら語るヨッシーさんの姿はカッコいい。
好きなものを好きと言うことは、高潔だと思った。
好きなものに自らの情熱を注ぐということは、誠実だと思った。
とある珈琲焙煎人の“好き”と“情熱”が周りの人にも伝播していった。
ヨッシーさんと一緒に大阪の淡路から来熊したヒトミさんもヨッシーさんの淹れるコーヒーが好きだと言った。
僕もヨッシーさんの淹れるコーヒーが好きだ。
『良い仕事』ってこういうことなのかぁ。
と僕は思った。
◆出発

ようやく重い腰を上げ外出する準備にとりかかる。
丁度その時くらいから空には晴れ間が見えてきて、太陽の光がポカポカと空気を温め始めた。
ああ、またダラダラしたくなってきた。
とてもダラダラしたくなってきた。
・・・がしかし、さすがにここは理性を効かせてダラダラせずに出発することにした。

来る道は熊本空港から和水までヒッチハイクでやってきたヨッシーさんとヒトミさん。
2人を車に乗せ、ついに『THE スナフキンズ』を後にする。
ダイキさん、ミカさん、ヨウくんが手を振りながら温かく見送ってくれた。
心の奥がじんわりと温かくなっていくような時間であった。
とんでもない宿である。
「生き物にとって自然に振る舞うというのはとても大事なことなんだ」
ムーミン谷のスナフキン