『ランニング飛脚便』 1日目(10/12)
福岡県・福岡市~福岡県・那珂川町

2015年10月12日13時、福岡県福岡市・大濠公園。
今日から5日間かけて、福岡~熊本間を“走って手紙を届ける”旅に出る。
名付けて『ランニング飛脚便』だ。
これを行うことになったいきさつは過去記事に書いたので、割愛させていただく。
さて、今回の旅路自体は、今年の4月~8月にかけて走って日本縦断をしたことと比べると比較的ライトなものと言えるだろう。
日本縦断ランで走った距離は約3700km。
かかった期間は約5ヶ月。
それに対して、今回の熊本までの『ランニング飛脚便』で走る距離は約120km。
かかる期間は5日間の予定だ。
だが、今回の試みには日本縦断ランと大きく異なる点がある。
それは“走って手紙を届ける”というミッションがあることだ。
「何のために走ってるの?」
とは、日本縦断中に数えきれないほど聞かれた質問だが、その度に僕は返答に窮していた。
それは、日本縦断ランに対して僕自身が「独りよがりに過ぎないのではないか」という後ろめたさ、またその自分本位のチャレンジに何か社会的意義を含ませなければならないというある種の束縛があったからでもある。
それに関して言えば、今回の『ランニング飛脚便』では、これを僕に頼んでくれた「依頼者」がいて、また僕が届ける手紙の「受取人」がいる。
本プロジェクトの根幹に、自分以外の「他者」が存在する。
それは、少なくとも「何のために走ってるの?」と聞かれたときに
「ある人に手紙を届けるために走ってます」
と答えることが出来るということだ。
だから何だ、と言われるかもしれないが、
5ヶ月間走りながら「自我」というものに延々向き合ってきた僕にとって、この違いは結構大きなもののように思える。
つまり、今回の試みが独りよがりから進歩したものになるのではないか、ということだ。
いや、日本縦断ランにおいても他者とのかかわり合いはもちろん沢山あったし、あのチャレンジが100%独りよがりのものではなかったと、今では思える。
もっと言えば「感動をありがとう」というこの上なく嬉しいお言葉も頂いたことがある。
ただ、「感動」とは曖昧な言葉で、何をしたから人はこれだけ感動するとかいう法則があるわけではない。
「感動」とは非常に抽象的で測定困難なものだ。
そこで、今回の取り組みでは“走って手紙を届ける”という具体的な活動を以て「感動」にアプローチしてみたいと思う。
こう言うと「感動」を狙いに行っているように思われるかもしれないが、まあ、あながち間違いではない。
だが、狙って得られるようなものではない気もする。
実のところ、僕は「感動」というものがよく分らないのだ。
だから、具体的な活動を以て「感動」という謎に満ちた人間の心理を少しでも解明したいという気持ちすらある。
ああしまった、いつものように語りすぎた。
まあそんなわけで、僕は今回も福岡のランニング仲間の方々に見送ってもらって大濠公園を走り出した。
毎回ありがとうございます。

走り慣れた福岡市街の道を大きなバックパックを背負って走るのは、どこか違和感がある。
出発したのが昼過ぎだったので、今日は控えめに20km程度走れば良いところだろうか。
今回の旅程には距離的に余裕を持たせている。

しばらく走ったところで、385号線に乗りそのまま福岡市街を南下。
ここも何度も走ったことのある道だ。
そして、10km程走ったところで那珂川町に入る。
少しずつ都会的な建物群が減っていき、山と田んぼの景色が姿を見せ始める。

おお。
1ヶ月半前に終えた日本縦断ランの感覚が少しずつ戻ってきた。

15km地点。
ファミレスのJoyfullで遅めの昼食をとって休憩。
まだ15kmしか走っていないが、この先にある福岡と佐賀の県境・背振山(せふりやま)が微妙に険しそうなので今日足を踏み入れるかどうか迷った。
雰囲気でも大体分かるが、この先に食料が買える店はなさそうだ。
そして山道に入れば寝る場所を確保できるかどうかが怪しくなってくる。
ああ、思い出した。
事前に自分が走ろうと決めた距離きっかりのところで寝る場所があるとは限らないのが「旅ラン」の難しいところだ。

結局、様子見でもう少し進んでみる。
時刻は18時を過ぎ、街灯の少ない山道は暗闇に近い。
(写真には何も写らない)
少し心細かったが、幸運にも4km走ったところでちょうど良く休めそうな場所があった。

市ノ瀬という地区の中ノ島公園だ。
屋根もあり、広さも申し分ない。
(写真は後日のもの)

さあ、久しぶりの野宿。
生ぬるい環境に馴染みかけた自分の身体にちょっと刺激を与えてやろうか。
[1日目・走行距離:19km]
[累積走行距離:19km]
