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日本縦断ラン #DAY 121 – 2015.7.31
3文字以上、考えられない。
北海道・森町 → 北海道・八雲町
■森町発
昨晩は、初めて知り合った福澤さんのご自宅で休ませてもらった。
翌朝、昨日の晩に引き続きどんどん食事を出してくれる。
それこそもう食べきれない程である。
お腹パンパンで明らかに走りに影響が出そうだったが、その善意が嬉しい。

そうして福澤さんと別れ、
8時前に森町を発つ。
森町の次はさらに北へ進み、八雲町を目指す。
案の定、朝食の食べ過ぎで身体は重かったが、1km6分ちょっとのペースで朝食を消化させつつゆっくり走った。
■内浦湾、野田生(のだおい)


雨が降りそうな気もするが、陽光も差している。
天候が読めない。
北海道に入ってから今のところ、北海道らしいカラッとした陽気には恵まれていない。
この湿度と温度の高さの中を走っていると、時々自分が今北海道にいることを忘れてしまいそうになる。


八雲町への道はずっと海沿いだ。
内浦湾内の穏やかな海を眺めながら淡々と走る。
水平線がぼんやりと見える。

10km走り、20km走ったところで一旦休憩。
野田生(のだおい)という所で止まる。
すると、ちょうど雨が降り出した。
休憩と雨宿りを兼ねて、バス停で休む。
北海道のバス停は屋根付き、壁付きなので有難い。
室内は多少汚れている場合が多いが。

ここでも地元のおばちゃんに差し入れを頂く。
奥尻島のアイスと飴玉を大量にくれた。
Give精神が凄い。
天気は雨でも心が温まる。
■八雲町(やくもちょう)

休憩後、雨は止み、今度は日差しが強くなった。
雨降りと、強い日差しの繰り返しで、湿度・温度ともに高くなる。
走るのにはあまり快適なコンディションとは言えない。
頭がボーっとしてきて、脳内には「や・く・も」の3文字しか浮かんでこない。
それ以上の思考はない。
何も考えなくても脚は動いてくれるようで、もはや体に染み込んだ癖のように走っているのだろう。


それから8km程走って、八雲町(やくもちょう)に到着。
お隣の森町と似て、海沿いにある小さな町だ。
道が綺麗にされていて気持ちが良い。
大きい店こそないが、おしゃれで小さな店がいくつか目に入る。
スポーツに力を入れているのか、大きくて立派な運動公園やプールもある。

駅も立派だ。
これで24時間開放されているというから、今日の寝床は心配なさそうだ。
午後は、溜まっている作業を消化しながら過ごし、八雲駅にて休んだ。
[121日目・走歩行距離:34km]
日本縦断ラン #DAY 122 – 2015.8.1
面白いほどに、まっすぐ伸びる直線道路
北海道・八雲町 → 北海道・長万部町
■八雲町発

午前7時、八雲駅を発つ。
今日も引き続き5号線を北上し、長万部町(おしゃまんべちょう)を目指す。

昨日に比べるとやや風があり涼しい。
今日は雨が降る気配はなさそうだが、代わりに空は青く澄み渡っている。
陽が昇るにつれてかなり気温が上がりそうだ。
事前にイメージしていた北海道の景色に近くなってきた。



1km6分のペースで淡々と走る。
面白いほどに真っ直ぐ伸びている直線道路。
左手には牧場や畑が広がり、右手には内浦湾の水平線が伸びている。
北の大地の雄大な景色に囲まれ、照り付ける陽光に苦しまされながら走る。
確かに暑いが、乾いた風が時折吹いてくれるのが幸いだ。

歩道こそないが、路肩には人が走れるスペースが十分にある。
しかし、居眠り運転でもしているのか時々蛇行して白線を越えてくる大型車両もあり、肝を冷やした。
■国縫(くんぬい)

20km程走ったところで、一旦休憩。
長万部町の手前の国縫(くんぬい)というところで脚を止める。
「くんぬい」はアイヌ語で「黒い川」という意味らしい。
地名というのは、最初に音があってそれに漢字を充てていることがある。
そのため、漢字の読みが連想し難かったり、本来の意味が隠れてしまったりする。
特に北海道・沖縄のような独特の民族的歴史を持つところでは、地名の漢字を見ても読みが分からないことがよくある。
元々、漢字は中国からの輸入品なのだと改めて感じる。

さて、この国縫。
店も自販機もほとんど見当たらない。
駅前にすらなかった。
ようやく見つけた自販機はガソリンスタンドの中。
そこで辛うじて水分補給だけは出来た。
僕は通常、朝食を食べずに走るので、この日は朝食・昼食ともに抜き。
水分と昨日差し入れてもらった飴玉でしのぐ。
■長万部町(おしゃまんべちょう)
国縫で休憩をとった後、走りを再開。
さらに8km程走る。
朝・昼食べていないが、良く身体は動く。
1km5分45秒ペースでリズム良く走れている。
人間は狩猟時代の本能で空腹時の方が集中力が増すと言うが、確かにそうかもしれない。
けれど、目の前に食べ物があると食い意地を張って食べ過ぎてしまうから困る。


やがて、長万部町(おしゃまんべちょう)に到着。
静かな温泉街だ。
ドライブ中の人達やライダー、チャリダーを多く見かける。
大学生だろうか、若者の旅行者も多い。
それでいて、騒がしくなく程よい賑わいである。

駅近く、コンビニ真向いという抜群のロケーションに、ライダーハウス兼銭湯を見つける。
ライダーハウス「たけちゃん」。
1泊1000円。入浴料400円。
今日はここで5日ぶりのお風呂に入ってゆっくりすることにした。
[122日目・走歩行距離:32km]
日本縦断ラン #DAY 123 – 2015.8.2
僕は、DNAに走らされている。
北海道・長万部町
■長万部二日目~どうでもよいこと
今日は、長万部に延泊することにした。
洗濯物が渇いていなかったからというのと、もっとゆっくりしていきたい気分になったからというのと。
多分、後者の方が理由として大きい。
ただの怠け者である。
気分屋である。

そういえば、函館で小保内さんから興味深い話を聞いたのでここに書き起こしてみようと思う。
脳神経の医師である小保内さん曰く、
現代の脳科学をもってしても「やる気」というものは未だに謎の部分が多いという。
例えば「何故、人は走るのか?」
これはランナー自身にとっても永遠の謎である。
ましてや走らない人からしたら、昨今のマラソンブームは摩訶不思議な現象にさえ見えるかもしれない。
確かに、走った後の達成感なり、自己実現の喜びなり、競争欲求なり、走ることには人を惹きつけるものがある。
しかし、それらは「走る」という行為に付随する要素を部分的に切り取っただけのものだ。
それらが“走る理由”であるとするなら、“走らない理由”もまた存在する。
「面倒くさい」「キツい」「単調でつまらない」「長続きしない」などいくらでもある。
それらの“走る理由”と“走らない理由”がある中で、
その人が実際に走るかどうかは結局「気分」の問題である。
“走りたい気分”なのか“走りたくない気分”なのか、というわけだ。
それから理由が後付される。
(もちろんすべてのケースにそれが当てはまるわけではないが。)
では今度は、その「気分」や「やる気」というのは何に裏付けられるのかという話。
それはずばり「DNA」。
人間はDNAによって、特定の刺激を受けた時にどう反応するかということが大体決められているらしい。
であるならば、走るという行為に対して「やる気」が生じたり、生じなかったりするのは、DNAのせいではないか。
「人は何故走るのか?」
それはまさしく
「DNAに走らされている」わけである。
うん。何だか物凄い名言を放った気がする。
ある分野に対して、自然と「やる気」が起こる人もいれば、全く「やる気」が起きない人もいる。
それはもうDNAに刻み込まれたその人の行動原則なのかもしれない。

宿のオーナーから差し入れてもらったスイカが美味い。
ご馳走様でした。
[123日目・走歩行距離:2km]
日本縦断ラン #DAY 124 – 2015.8.3
ヒグマ出没注意
北海道・長万部町 → 北海道・黒松内町
■長万部発
二日連続でお風呂に入るという贅沢な生活を終え、長万部の地を後にする。
これから内陸を抜けて、日本海側の小樽を目指す。
今日のゴール地点は、黒松内町だ。


午前7時、今にも雨が降りそうな天気の下、長万部を発つ。
距離案内の標識を見ると、一番近い場所で77km先。
流石、広大な北海道である。

霧のような柔らかい雨が身体を濡らす。
陽光は厚い雲に遮られ、暑さは感じない。
長万部でたっぷり休ませた身体は良く動く。
大腿とふくらはぎの筋肉に弾力があり、しっかり地面を蹴って走れている。
いわゆる「バネ走り」という感覚だ。
ペースは1km5分50秒程。
アップダウンが続く道をリズム良く走れている。
次第に強くなってきた雨が脚の筋肉を冷やしてくれる。

内陸へ深く入るように走っているので、道の両側には林が茂り出してきた。
霧ではっきりとは見えないが、奥には山並みが続いているようだ。
次第に車両の交通量が減り、走りやすくなってきた。
ところが、こう人気がなくなってくると、今度は何か獣が現れやしないかと心配になってくる。
そんな中、ついに現れた。

「ヒグマ出没」の注意看板。
やはり・・・。
北海道は、獣にビクビクしながら走るくらいが丁度よいのだろう。

■道の駅・黒松内(くろまつない)
走りの方は快調で、一気に23km走った。
20kmを超えてから脚が重くなってきたが、道の起伏を考えたらそんなところだろう。

そうして辿り着いたのは、道の駅・黒松内(くろまつない)。
朝の時間帯こそ人は少なかったが、昼前頃からどんどん人が増えだしてかなり賑わってきた。
イートインスペースが広く、駅内はとても綺麗に掃除されている。
居心地が良い。
Wi-Fiが使い放題だったので、ここで一気にブログ更新等を済ませてしまうことにした。
作業を一通り終えた後、
ふと、これまで走ってきたルートを地図で振り返ってみる。

なんだか笑えてきた。
人間意外と走れるものだな。
[124日目・走歩行距離:24km]
日本縦断ラン #DAY 125 – 2015.8.4
約50kmぶりのコンビニ
北海道・黒松内町 → 北海道・蘭越町
■黒松内町発

昨晩は、道の駅・黒松内で休む。
トイレ前の通路にベンチがあったのでそこで寝た。
夜中、誰もいないのに自動ドアが狂ったように何度も開くので気になって仕方がない。
時折止まったかと思えば、再び思い出したように勝手に開く自動ドア。
戸外は真っ暗闇。
流石にこの現象が続くと、少し縁起の良くないことを考えてしまう。
写真を撮ろうとしたが、変なものが写ったら嫌なので止めておいた。

そうこう夜を過ごして、翌朝5時半起床。
駐車場で車中泊していた人も多かったので何人かと話した後、道の駅を発つ。
雨は降っていないが、霧が濃い。
まだ梅雨は続くようだ。


走っていると、僕の後から道の駅を出発したキャンピングカーの人が車の中から差し入れをくれた。
同じ鹿児島出身者であったことも嬉しかった。
だが、この差し入れの品。
頂いたのが走り始めてしまった後だったので、バックパックにしまうのが面倒だ。
腕の筋トレがてら、この1000mlボトルを手に持ちながら走ってみた。
こんな活用の仕方も悪くない。
■蘭越町(らんこしちょう)


この日も走りは軽快で、1km5分40秒ペースでアップダウンをしっかり走り切った。

14km走ったところで、道の駅・蘭越に着くが、あまりゆっくりできそうではなかったので、間もなく再出発。
蘭越町の市街地まで、さらに8kmの道のりを走る。


後半は下り基調のコースであったこともあり、ペースは1km5分30秒前後。
妙にバックパックが軽く感じられたので、きっと疲労が上手く抜けていたのだろう。
霧が少しずつ晴れてきて、北海道の内陸の山並みが姿を見せ始めた。
そして、蘭越町(らんこしちょう)に到着。
約50kmぶりのコンビニを見つけて少しホッとする。
蘭越町は、山に囲まれた小さな町だ。
奥にニセコの山脈が見える。
すっかり北海道の内陸まで来たようだ。
店が少なく寝床が見つかるか心配だったが、ここの観光案内所で眠れそうだ。

「街の茶屋」
室内ではないが、屋根があるしベンチも大きくて快適だ。
ただ戸外なのでクマが出やしないか。
ビビりながら寝る。
[125日目・走歩行距離:23km]
日本縦断ラン #DAY 126 – 2015.8.5
めった刺しのニセコ牛
北海道・蘭越町 → 北海道・ニセコ町
■蘭越町発

5時に起床。
だが、身体が異常に重い。
恐らく昨日がやけに身体が軽く、調子に乗って走った反動だろう。
昨日は軽さに任せて、いつもとは違う走り方をしていた感覚がある。
ゆっくりウォーキングした後、しばらく身体を休めてから9時に再出発。

1km6分半のペースから徐々に身体をほぐしていく。
時刻が9時を過ぎると、太陽はすっかり昇って煌めいていた。
皮膚が焼けるような日差しが照り付ける中、ゆっくりとじっくりと走っていく。
それから身体が動くようになり、ペースは1km6分程まで上がってきた。

道は起伏が激しい。
ニセコ連峰が近づくにつれて、起伏が多くなってくるのだ。
なだらかな坂が多い北海道にしては、この辺りは傾斜がきつい。
延々と細かいアップダウンが続く。
やっと坂道を上り切ったと思ったら、すぐに次の上り坂が現れる。

思わず「マジか!」と一人で声が出る。
ただでさえ暑さが脚にダメージを与えている。
その状態で何度もアップダウンを走るのはなかなか酷である。
なるほど内陸に入ってから、自転車を漕いでいる人は極端に減った。
自転車はなおさらこの道を避けるに違いない。
車やバイクがスイスイと僕を追い抜いていく。
ライダーの人達は時折ガッツポーズを作ってエールを送ってくれる。
それを励みに一歩ずつ脚を前へ前へ運ぶ。
その様子を奥の羊蹄山(ようていざん)はただ静かに見守っていた。

■ニセコ町
16km走って道の駅・ニセコビュープラザに到着。


最後はフラフラになって辿り着いた。
距離は大したことはないが、暑さと起伏にくたびれた。
やはり気温は30℃を超えていたらしい。

北海道の中でも指折りの観光地であるニセコ町は、アウトドア系のアクティビティが豊富に用意されている。
ニセコ連峰を巡るトレッキングやサイクリング、それから清流での釣りやラフティング。
冬は良質な雪が積もるスキー場でウィンタースポーツが楽しめる。
平日にもかかわらずこの日も道の駅は夏のニセコを楽しみに来た家族連れや観光客で溢れていた。
山に囲まれた小さな町だが、人の賑わいが凄い。
まさしくニセコの観光シーズン真っ盛りだ。
またこれはニセコに限ったことではないが、北海道に入ってから外国語表記のポスターやパンフレットがよく目に付く。
そこは流石だなと感心した。
ただ、このシーズンは圧倒的に日本人観光客が多いようだ。


町全体のデザインも観光客がワクワクするようなものになっている。
豊富な自然資源のイメージにあった木材基調のお洒落な飲食店やアクティビティショップが多い。
道は綺麗にされていて雑多な感じはない。
道の駅にもユニークなモニュメントが接地されている。

何と、ニセコ牛がアイスクリームにめった刺しにされている。
もちろん家族連れ観光客たちには大人気だ。
何故アイスクリームに刺されているのか、なんていう野暮な質問は止めておこう。
夜は、道の駅内にクッションベンチがあったので、そこで快適に休むことが出来た。

[126日目・走歩行距離:18km]
日本縦断ラン #DAY 127 – 2015.8.6
北海道・ニセコ町 → 北海道・倶知安町
■ニセコ町発

8時前に道の駅・ニセコビュープラザを発つ。
快晴だった昨日に代わり、今日の空模様は曇り。
今にも雨が降り出しそうな感じだ。

走るには悪くない。
コースには起伏がいくらかあったが、淡々とリズムよく走れている。
ペースは1km5分45秒程。
今日は隣町の倶知安町まで走る。
■倶知安町(くっちゃんちょう)

倶知安町(くっちゃんちょう)までは、距離にして13km程。
曇り気味でそれほど暑くなく距離も短かったので、サクッと気持ち良く走れた。


倶知安から先にはしばらく町がないので今日はここで止まってゆっくりする。
ポツポツと弱い雨が降ってきた。
昼食はスーパーで買った弁当で済ませ、街中を散策。

「町」にしてはなかなか大きい。
飲食店や本屋も多く、不自由はなさそうな印象である。

その後、倶知安駅でゆっくりしていると、
「倶知安かあちゃん」と名乗る女性が話しかけてくれた。
とても気さくな方で、しかもその方もランナーだというからしばらく話し込んで盛り上がる。
するとその流れで、
何と北海道新聞の方に取材してもらえることに。
僕の「日本縦断ラン」が新聞記事になるわけだ。
倶知安観光協会に場所を移し、取材を受ける。
新聞掲載用の写真も撮ってもらった。

それから倶知安観光協会の方々と話したりして、ゆっくりさせてもらった。
皆、気さくな方ばかりで楽しい時間を過ごした。

夜は倶知安駅前のベンチで寝る。
流石に北海道。
夜になるとだいぶ涼しい。
[127日目・走歩行距離:15km]
日本縦断ラン #DAY 128 – 2015.8.7
北海道新聞デビュー
北海道・倶知安町 → 北海道・余市町
■倶知安町発

5時前起床。
今日の目的地は少し遠い。
目指す余市町は40km以上離れている。
最近、せいぜい30kmくらいしか走っていないので少し心配だ。
とか、ウダウダしながら早朝を過ごす。
さっさと出発すればよいものを。

兎も角、7時半に倶知安町を出発。
出発して間もなく前方から来た車が停まった。
昨日もお世話になった「倶知安かあちゃん」だ。
昨日取材された記事が今朝の新聞に載っていたよと教えてくれた。

実際の記事はこんな感じ。
僕もこれで北海道新聞デビューだ。
それから、倶知安の母からおにぎりの差し入れを頂き別れる。
ありがとうございました。
■新聞効果
今朝の新聞に載せてもらったおかげか、今日の道中は応援してくれる人が一段と多かった。
クラクションを鳴らして応援してくれたり、車の窓から手を振ってくれたり、
わざわざ車を停めて差し入れをくれたり。
「新聞見たよー。頑張ってー。」
と、声をかけてもらったりもする。
やはり新聞の効果は凄い。
これからはソーシャルメディアの時代だとかよく言われているが、
まだまだマスメディアの影響力の大きさは健在だ。
兎も角、こういう応援をたくさん受けながら、先刻までのウダウダした気持ちは吹っ飛び、元気よく余市町までの道のりを走っていた。
■稲穂峠
とはいえ、ずっと快調だったわけではなく、この日も厳しい暑さに苦しめられた。
ちょうど脚に疲れが溜まってくる17km地点あたりから稲穂峠の坂道が始まる。


元気な時ならそうでもない傾斜なのだろうが、この暑さの下で20km近く走ってきた脚には酷な上り坂である。
ペースは1km7分近くまで落ち込んだが、一歩一歩踏みしめるように坂を上る。
坂を上り切ると稲穂トンネルが姿を見せる。

が、いやいや。
流石にこれは歩道が狭すぎる。
と、当時はツッコむ気力もなかったので、すれすれで車両を避けながらふらつく脚を運んでいく。
■大魔王ポルポル

そうして峠を下り切ったところにある駐車場スペースで休憩。
一気に25km走った。
余市まではあと15km程残っている。
とりあえず、500mlボトル2本分の水を飲み干す。
それから差し入れでもらったおにぎりやチョコレートを食べ、なんとか息を吹き返した。

その後、靴を脱いで身体を休ませていると前方から若者がこちらへ向かってくるのが見える。
その若者の顔面には悪魔メイクが施されている。
大量の荷物を積んだママチャリを押していて、その正面には「日本一周中」の文字。
そしてママチャリの後尾には「大魔王ポルポル」という書かれたのぼりが掲げられている。

おやおや。
もはやどこからツッコんだらよいか分からない。
というか、ゆっくり休もうとしていたところが、それどころじゃない状況のようである。

大阪からママチャリで日本一周中の大魔王は、ちょうど北海道を一周し終えるところでこれから函館に向かうらしい。
余市から逃亡してきたという彼は、それから洗濯物を干し始めた。
水とお菓子を分けてくれた大魔王は優しかった。
■余市町


昼過ぎ、大魔王と別れ、再び余市町を目指して走り始める。
相変わらず日差しが強かったが、人里に下りて平坦な道が多かったので朝よりはラクに走れる。



さくらんぼの名産地・仁木町を抜けて、余市の町が見えてくる。
余市に着くころには陽が傾き始めて、涼しい風も吹いていた。

余市到着後、「宇宙の湯」という温泉へ。
入浴料440円。
5日ぶりの風呂である。

温泉でゆっくり身体を休めた後、夕食は海鮮丼を頂く。
入浴とセットで1000円なので、なかなかリーズナブル。
それから道を引き返して歩き、今晩は余市駅内で休んだ。

[128日目・走歩行距離:44km]
日本縦断ラン #DAY 129 – 2015.8.8
走る以外はインドア派
北海道・余市町
■余市2日目

5時起床。
今日は余市にて延泊することにする。
昨日40km以上走ったので、今日は無理せずに身体を休ませる。
またば、隣町の小樽で8/10に人と会う約束がある。
あと3日あるので先を急ぐ必要はない。

まずは、人が少ない早朝のうちに「ニッカウヰスキー工場」へ。
昨日はおびただしい数の人々が集まっていたので避けて通ったが、
朝の6時では流石に人はいない。
僕はあまりお酒を飲まないのでウイスキーがどうのこうのというのはよく分らないが、
早朝のみずみずしい空気を吸いながらウイスキー工場のレンガ造りの建物を眺めていると何か世俗を離れた気分になれる。
トイレのデザインもウイスキー工場風だ。

それから午前中はブログを書いたり、経費精算の作業をして過ごす。
それから溜まっていた洗濯物を洗濯する。
「走り旅」をしていると移動だけでヘロヘロに疲れてしまうので、観光地巡りをする余力が残っていないこともしばしば。
そういうとき、僕は完全に引きこもって身体を動かさない。
走っているとき以外は基本、貧弱かつインドア派だ。

午後は、スーパーのフードコートに居座ってひたすら英語を読み書き。
好きな洋画のスクリプトを熟読し、音読。
別に勉強をしている感覚ではなく、ただの趣味のようなものだ。
気付いたら5時間以上もそんなことをしていた。
走ってばかりいると、文化系の時間を過ごしてみたくなるものだ。
体力的に一日中走っているわけにもいかないから、走っている時以外はこういう時間の過ごし方が多い。
旅を始めて4ヶ月。
本を読むのが遅い僕でも、既に40冊近く本を読んだ。
ジャンル的には、普段なかなか手を出せないクラシック洋書や大正・昭和時代の文豪の作品も読み始めた。
せっかく時間が沢山あるのだから、走り以外の分野でも何か自分の感覚を磨いていきたいところだ。

夜は再び、余市駅で休む。
清潔な室内が24時間解放されていたので快適に休めた。
[129日目・走歩行距離:3km]
日本縦断ラン #DAY 130 – 2015.8.9
坂の運河の街・小樽
北海道・余市町 → 北海道・小樽市
■余市町発

5時起床。
今日も空気が澄んでいて気持ち良い。
静かな町に曙の光が差し込んで、あたりが明るくなりだす。
今日は隣町の小樽を目指す。
距離にして20km弱。
それほど遠くない。

余市から小樽までの道は日本海沿いに伸びている。
左手に海を眺めながらしばらく走る。
今日は日曜日。
海水浴やドライブへ向かうであろう人達の車が増えてきた。


確かに海岸沿いの景色は壮観だ。
切り立った崖が幾重にも連なっている。
日本海に吹く風を浴びると暑さはそれほど感じない。

いくつか起伏の激しい道もある。
それに応じてペースも上がり下がりがあったが、大体1km6分前後。
起伏が筋肉への程好い刺激になる。
■小樽

やがて、小樽の街並みが見えてくる。
“坂の町”といわれる小樽。
坂を下った先に港の姿が垣間見える。


小樽駅に到着。
思っていた以上に大きい街だ。
最近通ったのは「町」ばかりだったので、余計に大きく見える。
「市」を訪れるのは、函館市以来となる。


街を散策していると、坂だらけの道に見所が沢山ある。
港町らしく、異国風の建物と和風の建物が混在している。


海沿いのエリアまで足を伸ばすと一気に観光客の姿が増える。
港町として栄えてきた小樽のシンボルともいえる小樽運河。
今見ても当時の隆盛ぶりが目に見えるようだ。



観光物産店が立ち並ぶ通りに入ると、何か祭りが開かれているようだ。
北海道の短い夏。
この時ぞとばかりに毎週のように祭りが開かれるらしい。
雑踏の中を、あまり長居はせずに歩き抜ける。
どうも人が多いところは苦手だ。

一通り市街を散策し終える。
その後は、地元の方から頂いた差し入れをつまみながら本を読んだりして過ごす。

涼しい空気が流れ始め、陽が落ち始める。
小樽の夜は早いようだ。
みるみる人が減っていき、21時頃には町が静かになった。
それから僕は寝床を探し始め、今夜はその辺のベンチで寝た。
[130日目・走歩行距離:26km]