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日本縦断ラン #DAY 111 – 2015.7.21
人が地域を作る。
青森県・平川市 → 青森県・弘前市
■平川市碇ヶ関発

5時起床。
昨夜は温泉に入ったので気持ち良く眠れた。
涼しい気候で、夏の虫に煩わされることもなかった。

ゆっくり準備をして6時半に出発。
少しずつ運送会社の車が道の駅に寄りだしてきた頃だった。
今日は弘前市を目指して走る。
ペースは1km6分前後。
柔らかい雨が降っている。
■大鰐町



なだらかなアップダウンをいくつか越えて辿り着いたのは、青森県・大鰐町。
一見するとそれほど大きい町ではないようだが、住人は元気が良い。
朝から地元の人たちの楽しそうな会話が聞こえてくる。

駅前にある観光物産館・交流センターは「鰐come」といって、温泉やレストラン、多目的スペースなどの施設を整えている。
早朝から午後に近づくにつれ、地元産の野菜や果物が次々と運ばれてくる。
地元のお年寄りたちが大勢バスに乗って温泉に入りにやってくる。
たちまち、駅前エリアは賑やかな雰囲気に包まれていった。
まさに「人が地域を創っている」という印象だ。

大鰐町で朝食を済ませると、雨が本降りになってきたのでしばらく駅で雨宿り。
駅は広く、テレビも置かれているので退屈しない。

休憩を終え、再び走り始める。
午後になると、天気は一変し快晴となった。
朝の雨で蒸し暑さが残る中、鋭い日差しが肌に突き刺さる。
そんな気候で走っているので、汗が止めどなく噴き出してくる。
服は汗で濡れ、水を被ったかの如くの様子で走り続けた。
■弘前市

10km程走ると弘前市に入る。

街の外れにそびえ立つ岩木山を眺めながら走る。
きれいな三角形の山だ。
山の後ろには、油絵で描かれたような重厚感のある入道雲が視界に入る。
その景色はまるで動きを見せず、大きく構えている。

やがて城下町らしい街並みになって建物や車、人が増えてきた。


西洋風のレトロな建物も多く目に入る。
現代的な街並みに、和風城下町とハイカラな雰囲気が不自然なく調和している。



弘前城の広い敷地の周りには、運動公園やテニス場などがあり、ランニングにも適していそうだ。
そう思っていると、案の定地元の高校生たちが走り込みに励んでいた。
城の周りを歩いていたときに声をかけてくれた人は、かなり高いテンションで応援してくれた。
そういえば、街を歩く人はみな表情が明るいように見える。
厳しい暑さと湿度の中走り、歩き続けてきたので多少くたびれた。
市内で夕食を済ませ、今日はネットカフェに泊まる。
[109日目・走歩行距離:25km]
日本縦断ラン #DAY 112 – 2015.7.22
<112日目(7/22)>
青森県・弘前市 → 青森県・藤崎町
■弘前市発

4時半に起きて弘前市内のネットカフェを出発する。
ところが、睡眠は1時間半ほどの仮眠しかとっていない。
というのも、ネットカフェに入っているのに寝るのが勿体ないという心境で映画ばかり見ていたのだ。
案の定、疲労が取れていない上、踵の痛みがさらに酷くなっていた。
自業自得ではあるが、割と悲惨な身体のコンディションだったのでこの日はウォーキングのみに。


この日は昨日以上に暑かった。
特に湿度が高いので、歩いているだけで蒸された身体から汗が噴き出してくる。
こういう日のウォーキングは精神的に参ってくる。
余談だが、僕は歩いている時に気を紛らわすつもりで、よくお気に入りの洋画の英語セリフをつぶやいている。
最近はそれにハマりだして、ネットから英語スクリプトを紙に書きだして暗記。
ひたすらそれをつぶやきながら歩いたり走ったりしている。
傍から見たら不審極まりないが、走りつつ英語のトレーニングも出来て一石二鳥である。
■藤崎町


10km歩いて、弘前市の北に位置する藤崎町に到着。
汗だくの状態でスーパーのクーラーを浴びると物凄く寒い。
この気温差で体調を崩さないようにしなければ。

スーパーの休憩スペースで、弘前市で調達した本を読み漁りながら午後の時間を過ごす。
ここのスーパーは地元の中高生たちの溜まり場のようだ。
傍では、ママ友が会話を楽しんでいる。
勉強する主婦や一人で昼間の酒を嗜んでいるおじちゃんもいる。
地方のスーパーは単なる「買い物する場所」ではいけないのかもしれない。
そして、いつものように閉店間際の値下げ惣菜で夕食を済ませた。
この日は熱帯夜。
外でも寝袋は要らない程の暑さだったが、虫除けのために堪えて寝袋に包まって寝た。
[112日目・走歩行距離:10km]
日本縦断ラン #DAY 113 – 2015.7.23
圧倒的な仕事への誇り
青森県・藤崎町 → 青森県・青森市、蓬田村
■藤崎町発

午前4時半、頬をポツリポツリと打つ雨に起こされる。
雨が降りだしたようだ。
屋根がないところで寝ていたので直接雨に起こされる形となった。

次第に雨が大降りになったので、場所を移動した。
大降りになったのが真夜中ではなくて良かった。

6時前になると徐々に雨足が弱くなってきたので出発する。
今日は夕方までに青森市で人と会う約束があるので、早いうちに進んでおかなければいけない。
■浪岡
雨が降る中、なだらかなアップダウンを走り続ける。
ペースは1km6分前後。


10km程走って青森市に入ると、まずは浪岡という町が見えてくる。
立派な道の駅があったがスルー。
雨の日に何度も止まるのはあまり良くない。
走るのを止めると、雨で濡れた身体が冷えてしまうからだ。
それに着替えも残り少ない。

とはいえ、青森市街まで一気に34km走るのはキツいので、16km地点のバス停で休憩を兼ねて雨宿りする。
雨は土砂降りではないが、それでも2時間も打たれていると身体はびしょ濡れになった。
地方のバス停に待機していると地元の老婦人たちに話しかけられる。
しかし、何を言っているか聞き取れない。
まるで外国語である。
ただ、ここの人達は標準語に割とうまく切り替えられるようで、そうしてもらえば問題なく会話できる。
後で聞いたところでは、津軽弁と標準語はほとんど別物であるから逆に切り替えやすいという。
■青森市

浪岡から再び走り始め、青森市街を目指す。
雨は止んだが、また蒸し暑い気候となった。
それでも走りの調子は悪くなく、なだらかな起伏のある道を1km5分40秒程のペースで走る。



16km走って青森市の中心地に到着した。
青森駅や県庁があるエリアだ。
時刻は3時過ぎ。
それから、夕方に会う予定の人と連絡をとる。
■蓬田村(よもぎだむら)
会う約束をしていた方が住むのは蓬田村(よもぎだむら)という村だった。
青森市から津軽を北へさらに10km進んだところにある。
人と会う状況なので、青森市から蓬田村までは例外的に電車を使って向かった。
3ヶ月前、長野県・売木村へ向かう際にも例外的に電車に乗ったのだが、電車に乗るのはそれ以来である。
これだけ電車に乗る機会が少ないと、いざ電車に乗るときに違和感がある。
余談だが、島育ちの僕は電車のない土地で18年間育った。
一人で切符を買って電車に乗ったのは大学受験の時が初めてだった。
そう考えると、元々電車に依存したくないという意識があるのかもしれない。



兎も角、蓬田村に到着した。
ここでBBQの用意をして出迎えてくれたのは石田さん。
仙台でお世話になった奄美料理店を営む大五郎さんを経由して、Facebook上で知り合った。
夜には蓬田村の消防団の方たちもたくさん集まって楽しい時間を過ごした。

蓬田村の名産はトマト。
一度にこれだけたくさんのトマトを食べたのも初めてだが、もっと驚かされたのはその甘さである。
蓬田のトマトを食べたらトマトの概念が覆りかねない。
百姓の村である蓬田は石田さんをはじめ、多くの人がトマト農園を持つ。
この夜も、トマトの品種や育て方、さらには市場の状況や流通、売り方まで、様々な議論が熱くかわされた。
一次産業の生産者たちの自らの仕事へ誇りに圧倒されんばかりであった。
こうした生産者の姿が末端消費者の目に触れる機会はそれほど多くないのではないか。
そうした思いが頭をよぎった。

[113日目・走歩行距離:34km]
日本縦断ラン #DAY 114 – 2015.7.24
何がどう繋がるかなんて読めない
青森県・蓬田村
■蓬田村にて休養
昨晩は、蓬田村で石田さんのご自宅に泊まらせていただいた。
布団でゆっくり寝たのは岩手の盛岡以来、3週間ぶりだった。
また、本州最北端の青森県まで辿り着いたということで、北海道を走る前にしばらく休養期間をとり身体をリフレッシュさせることにした。

午前中ゆっくり過ごした後、石田さん一家と共に海水浴へ。
海岸線沿いにある蓬田村はすぐそばに海がある。
津軽は海の幸も豊富だ。
海岸にはまだほとんど人がおらず、海はよく透き通っている。
海の向こうに見える大陸は下北半島だろうか。
天気が良い日は、この場所から北海道が見えることもあるという。
■百姓の仕事


家に戻ってからトマトのパック詰めなどを手伝わせてもらった。
収穫したトマトが大量に運ばれてくる。
これでも今日は少ない方だという。
この美味しいトマトが店に並び、人々に買われ、食べられるのだと考えると、パック詰めをしながらなんだか嬉しくなる。
農業の楽しさを垣間見た気がした。


昨今、農業は変革の時だと言われている。
ただ作るだけが農業ではなくなった。
生産量や収穫量を計画・コントロールし、販路や売り方までよく考えなければならないという。
会計をかじっている僕としては、農業会計といった分野も面白そうだと思った。
この旅で多くの地域を見たり人に会ったりしながら、様々な仕事の仕方や生き方を知ることが出来る。
いつ、どこに何があり、それらがどう繋がっていくか分からないから旅は面白い。
[114日目・走歩行距離:0km]
日本縦断ラン #DAY 115 – 2015.7.25
北の大地・北海道へ
青森県・蓬田村、青森市 → 北海道・函館市
■蓬田村発
2日間お世話になった蓬田村を離れ、青森市に戻る。
石田さんご一家には本当にお世話になった。
ありがとうございました。
■青森市、再び

再びやってきた青森市では、旅中に壊れてしまったクマ鈴などの物資を調達。
そして、バックパックから危険な異臭が発せられていたので、石けんを放り込んでおいた。


昼食は青森の名物・味噌カレー牛乳ラーメン。
コクの深いスープはかなりコッテリで満腹感が得られる。
これはスープだけでも十分美味い。



その後、青森駅の周辺を散策。
メモリアルとして展示されている連絡船・八甲田丸や、観光センターを巡る。


青森湾に面した海浜公園では音楽祭が開かれ、愉快なリズムを刻んでいる。
また、日本を代表する祭り・ねぶた祭りを来週に控え、その準備で町全体がなんとなく忙しない。
■本州走破

賑やかな雰囲気を背に、ふと青森湾を眺める。
福岡から走り始め、山口から本州に入り青森までやってきた。
これで日本の本州を走り切ってしまったことになる。
全国地図で見ると、よくもまあ物好きなことをするものだと我ながら思ってしまう。
この海の向こうに、今回の旅で最後の大陸・北海道がある。
その北海道の玄関口・函館まではフェリーに乗って向かう。
流石に海は走れない。
■青函フェリー

青森から函館へ向かうフェリーは一日8便出ている。
所要時間は4時間弱。
僕は敢えて11時30分の最終便に乗る。
フェリーの中で寝ることが出来るからだ。
そうすれば、移動と宿泊を兼ねることが出来て、費用も浮く。
青森駅から少し離れたところにあるフェリー乗り場まで歩いていき、出発の時刻を待つ。
思ったより人は少ない。
フェリーを利用する人はほとんど車やバイクを持っていく人たちのようだ。


さて、船内に乗り込んだ。
人は少なく、広々と寝ることが出来る。
函館到着は翌3時半頃。
ゆっくり寝ることは出来ないが、野宿に比べると十分快適である。

[115日目・走歩行距離:7km]
日本縦断ラン #DAY 116 – 2015.7.26
旅人が集う大地
北海道・函館市
■北海道・函館市

午前3時半、函館市に到着。
初の北海道上陸はシンとしたフェリーターミナルで果たされた。
外はまだ暗い。
本州と比べると、やはり空気は少し乾いている。
それでも警戒していたほど寒くはなかった。

それから函館駅に向かって歩き始めると、早速噂のコンビニ・セイコーマートを発見。
北海道ではどの大手コンビニよりも店舗数が多く、道民の生活に身近な存在だという。
ここで、かなり早めの朝食を済ませる。

そして、函館駅に到着。
時刻はまだ6時前。
空からはポツポツと雨が降り出した。
次第に雨は激しさを増し、本降りになった。
函館では7月下旬から8月上旬にかけて1~2週間程、梅雨の時期があるという。
北海道に梅雨はないと聞いていたが、北海道の広さを考えれば同じ道内でもその地方によって天候はかなり変わってくるのだろう。
雨宿りも兼ねて、この日の午前中は室内で作業をして過ごした。

函館では何人か人と会う約束があるので、しばらくの間滞在することにする。
ついでに身体を休養させる良い機会だ。
とは言ったものの、函館初日は人と会う約束はなかったので、ぶらぶらと函館市内を散策する。


午後過ぎになって雨は止み、今度は一気に日差しが強くなった。
天候がころころ変わるようだ。
函館市内を走る路面電車にはどこか懐かしさを感じる。
ところどころに建っている西洋レトロな建物の景色と相まって、
昔歴史の教科書で見た文明開化の明治時代を彷彿させる。
途中声をかけてくれたおばあさんは、宿や温泉の情報を仔細に教えてくれた。
旅人のおもてなしに慣れているといった印象だ。



五稜郭に着いた。
空から見るとその堀は星形に見える。
堀の周りには多くのランナーが走っていて、函館のランニングスポットのようだ。
なかなか良い走りをしている人もいて少し身体が疼いた。
■ドミトリー・シルシル


今晩は、五稜郭近くにあったゲストハウスに泊まる。
宮城・仙台の「梅鉢」以来、久々のゲストハウスだ。
国内でもゲストハウスが増えてきたとはいえ、東北にはまだほとんどなかった。
一泊1700円。
北海道の宿泊施設は安い。
500円程度で泊まれるライダーハウスも珍しくないというから旅人には有難い。
[116日目・走歩行距離:12km]
日本縦断ラン #DAY 117 – 2015.7.27
この旅で最も高級なディナー
北海道・函館市
■函館二日目
昨晩泊まったシルシルでは、車で日本一周している旅人や北海道をぶらぶら旅している人に会った。
また、この週末GLAYの地元ライブがあったようで、そのライブのために全国各地からお函館を訪れている人達もいた。
宿のリビングは広く、背の低いテーブルの周りに宿泊者がゆるりと集まって寛いでいる。
オーナーも自由気ままな面白い方でアットホームな雰囲気だ。
午前中のんびりと過ごした後、シルシルを発つ。

今日は夜に人と会う約束があるので、それまで再び函館を散策する。
昼食は、函館の名物バーガーショップ・ラッキーピエロ。



店の外装も内装もこのように独特で、見ているだけで面白い。
バーガー1個350円~。
値段の割にボリュームがあるのが嬉しい。
GLAYのライブを観に来たであろう人達が町中にいた。
ライブは昨日までだったが、その翌日である今日を観光日に充てているのだろう。


五稜郭から函館駅は3~4km離れているが、再び函館駅方面へ向かう。
駅よりも南はさらに西洋レトロな雰囲気が漂う。
路面電車の使い込まれたような車両が良い味を出している。



港へ足を伸ばすと、赤レンガ倉庫群が姿を見せる。
昔からの外国との交易地らしい陽気な雰囲気だ。
港の景色は異国情緒に溢れていて、ここが日本でないような気持ちすら起こる。
恐らくこのエリアが最も観光客が多いのだろう。
平日にも関わらず、通りは多くの人で溢れている。
その半数近くは外国人のようだ。
特に中国人の団体観光客が目立つ。




振り返れば坂があり、山があり、海があり、港がある。
古い和式の建物や倉庫、西洋レトロな建物が立ち並ぶ通りを、住民に慣れ親しまれている路面電車がゆっくりと走っている。
函館には多様な顔があって面白い。
その景色のバリエーションが人を惹きつけているのではないだろうか。
人は多いが、街も広いのでそれほど人が密集している感じはない。
■函館二日目・夜
一通り、函館散策を終える。
それからお会いしたのは、小保内さん。
岩手・盛岡でお世話になった小保内さんの弟さんである。
函館に行くときは寄ってみてと言ってくれたので、挨拶に伺った。
すると、なんと高級コースディナーをご馳走してくれた。
写真こそ撮り忘れたが、いや、あまりにも高級な雰囲気の中で料理の写真を撮ることに気後れしてしまったというのが実際だ。
兎に角、この旅で最も高級なディナーだった。
そのコース料理をゆっくり食べながら、旅の話や仕事の話など話し合った。
窓からは夜の函館が一望できた。
と、恐縮するくらい優雅な夕食をさせてもらった。
その上、小保内さんは今晩のホテルを僕のために手配してくれた。
いやいや、懐が深すぎます。
でも、有難く甘えさせてもらった。
本当に感謝しかない。


小保内さんと別れた後、こちらのバーへ。
「BAMBOO」

福岡でお世話になっている人の紹介で訪ねた。
海の傍にあるバーで、夜の海の静かな波音を聞きながら飲むことができる。
オールドアメリカンな店内は落ち着いた雰囲気だ。


オーナーのタケさんや常連さん達とわいわい話しながら楽しい時間を過ごした。
皆、本当に温かく迎えてくれて、つくづく有難いと思う。
どこもかしこも良い場所ばかりである。
世界を見る目が変わる。
[117日目・走歩行距離:7km]
日本縦断ラン #DAY 118 – 2015.7.28
豪快な日程オーバー
北海道・函館市
■函館三日目

昨晩は、小保内さんが手配してくれたホテルで休む。
朝食バイキングでは豊富な種類の料理が用意されており、中には海鮮丼もあった。
元をとってやらんとばかりに、僕は朝からドカ食い。
文字通り、お腹がはち切れそうなほど食した。
どうもバイキングでは食い意地を張ってしまう。
兎に角、昨日の晩に続いて贅沢な朝。
函館を離れたらまた野宿生活が続くだろうから、今のうちに贅沢を楽しんでおく。

さて、今日も人と会う予定だ。
その人は新潟で出会った日本一周チャリダーで、今日ちょうど北海道を一周して函館に戻ってくるとのことだった。
しかし、今日の天候は大荒れ。
雷光が何度も煌めく中、雨がザーザーと降り続けている。
案の定、彼も足止めを食らっていたようだ。
昼過ぎに雨は弱まってきたが、結局彼が函館に着いたのは夜。
疲労もあるとのことで、明日会うことになった。
兎に角、雨の中お疲れ様だ。
無事で何よりである。
旅をしていると、なかなか予定通りに事は進まないものだ。
天気にも影響されるし、体調にも影響される。
そういえば、僕も当初は三ヶ月でこの旅を終える予定だったが、うっかりもう四ヶ月だ。
豪快な日程オーバーである。
この日はまた雨が降り出しそうだったのでネットカフェに泊まった。

[118日目・走歩行距離:6km]
日本縦断ラン #DAY 119 – 2015.7.29
旅人が集まる夏の北海道
北海道・函館市 → 北海道・七飯町
■日本一周チャリダーとの再会

新潟で出会った日本一周チャリダーの尚平くんと北海道にて再会。
無事に北海道を一周し終えて、ここ函館に戻ってきた。
お疲れ様。
会うのは約二ヶ月ぶりだったが、お互いにいろいろ経験してきたようだ。
函館定番のラッキーピエロで昼食を食べながら、
旅話に花を咲かせたり、今後について話し合ったりした。
彼はこれから日本本州をジグザグと南下していくそうだ。
お互い気を付けていきましょう。


■函館発~七飯町(ななえちょう)
三日間滞在した函館を遂に発つ。
青森、函館でたっぷり身体を休めたので、今日から気合を入れ直して北海道の旅を始める。

と意気込んだものの、天候は走るには少々厳しかった。
連日の雨でムシムシとした空気が立ち込める中、太陽の光が容赦なく照り付ける。
湿度が高いので、身体中に熱が籠るのを感じる。
それでも、疲労はよくとれているので、身体は割としっかり動く。
1km6分前後のペースでじっくりと走った。


しばらくすると、函館市の隣町・七飯町(ななえちょう)に入る。
眼下には北海道の広大な土地が広がっている。

そして、やはり夏の北海道はライダーやチャリダーが大変多い。
走っているとひっきりなしにライダー、チャリダーとすれ違う。
すれ違いざまにお互いにエールを送りあうのが楽しい。
「頑張れー」と声をかけてくれる人もいれば、手を挙げてサインを送ってくれる人もいる。
中には、わざわざ止まって話しかけてくれる人もいる。
身体はキツいが、その度に元気が出る。
似た者同士、巡り合うと嬉しいものだ。
■大沼公園

七飯町の市街地を抜けるといよいよ山に囲まれた道が始まった。
北海道は町と町の感覚が長い。
下手をすると、山や牧場のど真ん中で泊まることになりかねない。
そうなると熊などの獣に襲われる可能性もあるから、その惨事は避けたい。
隣町までの距離と道のりを頭に叩き込むなり、泊まれそうな場所を探しながら走るなり、より一層気を付ける必要がある。
なだらかな上り坂が続く。
そして、流石に北海道。
道が広く、車のスピードが速い。
車にも細心の注意を払いながら走る。



やがて、見えてきたのは大沼公園。
新日本三景にも指定された国定公園である。
雲がかっているが、後方に駒ヶ岳も見える。
この日は、一気に23km走った。
後半はかなり脚が重くなってしまったが、休み明けにしてはそこそこ良く走れた方か。
大沼公園駅で、大量のハエと蚊の襲撃に耐えながら夜を過ごした。


[119日目・走歩行距離:26km]
日本縦断ラン #DAY 120 – 2015.7.30
「ただ元気になって帰って欲しいだけ」
北海道・七飯町 → 北海道・森町
■七飯町・大沼公園発

昨晩は大沼公園駅で休んだのだが、大量のハエと蚊に襲われた。
夏という季節もあるだろうが、すぐそこに大沼が広がっているからだろう。
気が違ったように僕の身体にまとわりついてくる。
汗の匂いが彼らを惹きつけているのかもしれない。
寝袋で防御してみるが、それはそれで蒸し風呂のように暑い。
そうこうしていてその晩はまともに眠れなかった。

翌朝7時、大沼公園駅を発つ。


大沼公園の壮観な景色は眺めていて素晴らしいのだが、やはり蚊がまとわりつく。
走っていてもまとわりついてくる。
何度振り払ってもまとわりついてくる。
何を思って、こう凝りもせずにまとわりついてくるのだろう。
広い大沼公園を隅々まで見て回ることはできなかったが、というより、まとわりつく蚊から早く逃げ出したくて、大沼公園を後にした。
後で虫除けスプレーを買っておこう。
■森町

大沼公園を後にして、さらに北へ進んで行くと森町に入る。
だが、市街地まではさらに10km以上はあるだろう。
なだらかなアップダウンを淡々と走る。
景色はほとんど変化がない。
道幅の広い直線道路を走る車は自然とスピードが上がる。
そんな中、歩道がない道が結構多いものだから危険だ。
相変わらずすれ違うライダーやチャリダーが多い。
特にチャリダーとは、止まって話をしたり、エールをかけあったりする機会が多い。
単調なランニングの中で、そうした一時が楽しい。


やがて、森町の市街地に入る。
海沿いに伸びる小さな町だ。
海猫の鳴き声が心地よく聞こえる。
よく見ると数えきれないほどの海猫が海岸沿いに並んでいた。

これ以上進むと、隣町まで結構距離があるので今日はこの森町で休むことにする。

夜の早い頃、町をフラフラしていると声をかけてくれた人がいた。
福澤さんという方で、写真は撮り損ねたが、とても親切にしてくれてこの日は福沢さんのご自宅に泊めさせてもらった。

採れたての野菜や魚までご馳走してくれた。
海も山も近い森町は食材の宝庫で、米以外の食費はほとんどかからないという。
なんとも魅力的な町だ。
福澤さんはその後も次々と差し入れをくれるのだが、それはもう持ちきれない程であったので有難くお気持ちだけ頂戴した。
「寄ってくれた人にただ元気になって帰って欲しいだけ」
そう語る福澤さんの見返りを求めないおもてなしを受けてこの日は休んだ。
[120日目・走歩行距離:23km]