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6種類のペースを使い分けて、効果的にトレーニングせよ『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』②【トレーニング論】

 

どうも。
ウエハラです。

前回に引き続き、今回も『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』を自分なりに解体してまとめた記事です。

 

この本は確かにマラソントレーニングの教科書的な存在ですが、

常に教科書通りに上手くいくとは限りません。

臨機応変に調整していくことも大事です。

 

という前提で話を進めていきます。

実際にこの記事でも僕なりの解釈を付け加えているので、ご了承ください。

(日本語版)
『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』

↓↓↓

 

Ⅰ. ペースによって得られる効果が異なる

 

みなさん。

マラソンの練習ってどれくらいのペースで走ればいいか分かってますか?

 

これ、答えから言うと、

一概に決まっていないって言うしかないんです。

 

だって、どのくらいのペースで走ればいいかは人によって違うから。

っていう当たり前な話なんですが。

 

『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』【解体新書①】では、

以下のような記事を書きました。

↓↓↓

自分の適正ペース知ってる?VDOT計算ツール活用のすすめ。『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』①【トレーニング論】 ◆自分の「適正ペース」知ってる? あなたは自分の「適正ペース」を知っていますか? もし、あなたがマラソンで目標と...

 

要するに、世の中には様々な走力レベルのランナーがいます。

それらの異なる走力を持ったランナー達に対して、一律に「このペースで走れば速くなる」なんていう絶対的なものはありません

 

例えば、4分30秒/kmというペース。

これはランナーXさんにとってはトレーニングとして丁度良いペースです。

しかし、ランナーYさんにとっては速過ぎるペースだということがあります。

 

そして、この異なる走力の2人に対して「4分30秒/kmで走りなさい」と言って同時に走らせた場合、

Xさんにとっては良い練習になりますが、

Yさんにとってはただキツいだけの練習となってしまいます。

 

Yさんがこのペースで走ることを強いられた場合、まず決められたペースで練習を走れるかどうかも怪しいし、たとえ走り切れたとしても過度に疲労が溜まり、怪我に繋がります。

さらに、思うように走れなかった時は、精神的なダメージも受けるかもしれません。

これでは、自分の走りに対して良いイメージは生まれません。

自信を無くすだけです。

 

で、何が言いたいのかというと。

それぞれの走力レベルに応じた「適正ペース」というものがあるということなんです!

 

自分の「適正ペース」を把握した上で、それぞれの練習に目的意識を持って取り組むことが、練習効果の最大化に繋がります。

 

そして、「適正ペース」にはいくつか種類があり(ここでは6種類に分けます)、それぞれのペースによって得られる練習効果は異なります

だから、トレーニングの目的/内容によってそれぞれのペースを使い分けていく必要があるのです。

 

先にまとめておくと、こんな感じ。

↓↓↓

 

①『ダニエルズ理論』上の、走力指数VDOTを活用し、
自分の走力を知る。

②自分のVDOT走力に応じた「適正ペース」を把握する。

6つに分類した「適正ペース」
トレーニングの内容によって使い分ける。

 

ではこれ以降、以下の異なる走力レベルを持つ3人のランナーを例に挙げて見ていきます。

↓↓↓

・ランナーA→フルマラソン2時間30分切り(サブ2.5)目標

・ランナーB→フルマラソン3時間00分切り(サブ3)目標

・ランナーC→フルマラソン4時間00分切り(サブ4)目標

※ちなみに、僕のフルマラソンの目標は2時間30分切りなので、ランナーAさんは僕自身を想定しています。

 

Ⅱ. 6種類のペース

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第3版 / ジャック・ダニエルズ
p.80

 

まず、上記3人のそれぞれの目標を達成するためにどれくらいのVDOT走力が必要か見てみましょう。

 

『ダニエルズ理論』のVDOT表によれば、

 

・Aさん→VDOT 67 (フルマラソン2時間28分40秒)

・Bさん→VDOT 54 (フルマラソン2時間58分47秒)

・Cさん→VDOT 39 (フルマラソン3時間54分34秒

 

という数値が算出されます。

 

では、以下の6種類それぞれのペースにおいて、3人の「適正ペース」も見てみましょう。

 

なお、ここで言う「適正ペース」とは、フルマラソンでの目標タイムから算出したものなので、いわば「このペースで練習できれば、目標のタイムを達成する可能性が高いですよ」といった推測値です。

必ずしも現状の段階ですぐにこのペースで練習しないといけないというわけではなく、それぞれの目標レースの時期にそのレベルまで達していれば良いです

 

①ジョグ (Jog) ペース

 

「ジョグペース」とは、普段のジョギングで走る時のペース

僕の言葉で言えば“頑張らなくても走れるペース”です。

 

オリジナルの『ダニエルズ理論』では言述されていませんが、僕はこのペース域もそれぞれで認識しておいた方が良いと思います。

というのは、次に紹介する「イージーペース」が、個人的に全然イージーではないからです。笑

 

つまり、この「ジョグペース」はウエハラオリジナルの設定。

下に記すタイムも単に「イージーペース」に+45秒しただけであり、その計算式には根拠がないのであくまで参考にする程度に留めていただければと思います。

 

疲れている時は以下の設定ペースより遅く走っても良いし、体調が良ければ以下の設定ペースよりも速めに走っても良いです。

 

普段のジョギングでは、走るペースが体調の変化によって大きく左右されます

だから、ここではペース設定に幅を利かせて、あまり神経質にならない方が良いですね。

 

また、LSD (Long Slow Distance=ゆっくり長距離を走る)LST(Long Slow Time=ゆっくり長時間走る)といった練習ではもっと設定を遅くしても良いでしょう。

ちなみに、これらの練習では、長時間身体を動かし続けることで、毛細血管の発達脂質代謝の促進といった効果が期待できます。

 

・Aさん (サブ2.5)→ 5分09秒~4分37秒/km (VDOT 67)

・Bさん (サブ3.0)→ 5分59秒~5分23秒/km (VDOT 54)

・Cさん (サブ4.0)→ 7分31秒~6分48秒/km (VDOT 39)

 

②イージー (Easy) ペース

 

「イージーペース」とは、『ダニエルズ理論』によれば、“ラクに走れるペース”

本の中では、このペースで走る練習が全体の練習の大部分を占めるようにと書いてあります。

 

しかし、先述した通り、個人的にこのイージーペースは、決してラクとは言えません

ここは注意しましょう。

 

人によって、体調によって、ラクに感じられることもあると思いますが、

普段のジョギングや疲労が溜まっている時でもこの「イージーペース」を忠実に守って走り続けていたらおそらく練習強度が高すぎて怪我や不調に繋がってしまいかねません

 

僕はフルマラソンを2時間37分台で走るので、そのVDOTにおけるイージーペースは4分38秒~4分05秒/km

しかし、普段のジョグもずっとこのペースで走れと言われれば正直しんどいです。

 

僕は疲労感ががある時のジョグは普通に6分/km以上かかるペースで走っています。

早朝に走る時はペースが上がらないなどコンディションに左右されることもあります。

 

だから、そういうときは①で紹介したジョグペースざっくりとしたペース感覚、むしろペースも気にしないくらいラクに走る日があっても良いと思います。

 

というわけで、前置きが長くなりましたが、この「イージーペース」を僕なりに解釈するなら“速めのジョグペース”

キツくはないが、少し集中して走る必要があるくらいのペースです。

 

ただ、この「イージーペース」も「ジョグペース」と同じくトレーニング全体の基礎を作り上げる重要なペース域には違いありません。

「ジョグペース」と同じく、毛細血管の発達、心筋強化、1回血液拍出量の増加といった効果が期待できます。

 

数値で表せば、

VO2max(最大酸素摂取量)の59~74%

HRmax(最大心拍数)の65~79%

 

・Aさん (サブ2.5)→ 4分24秒~3分53秒/km (VDOT 67)

・Bさん (サブ3.0)→ 5分14秒~4分38秒/km (VDOT 54)

・Cさん (サブ4.0)→ 6分46秒~6分03秒/km (VDOT 39)

 

③マラソン (Marathon) ペース

 

「マラソンペース」とは、その名の通り“マラソンでのレースペース”のことなので非常に分かりやすいですね。

この「マラソンペース」こそがフルマラソン本番で走らなければいけないペースなのだから、このペースで42.195km走り通せる力を身に付けるイメージを持って練習に取り組むと良いでしょう。

 

トレーニングへの組み込み方としては、秋以降涼しくなる時期から

12000~16000mのペース走を行う時に、マラソンペース~それよりやや速めのペースで走れると良きですね。

 

また、20~30kmのペース走の時に、マラソンペースよりやや遅め~マラソンペースを走れると良き良きですね。。

 

数値で表せば、

VO2max(最大酸素摂取量)の75~84%

HRmax(最大心拍数)の80~89%

 

・Aさん (サブ2.5)→ 3分31秒/km (VDOT 67)

・Bさん (サブ3.0)→ 4分14秒/km (VDOT 54)

・Cさん (サブ4.0)→ 5分37秒/km (VDOT 39)

 

④閾値 (Threshold) ペース

 

「閾値ペース」とは、“20~30分間運動を継続できるペース”です。

 

生理学的に言えば、この運動強度は、

乳酸の分解が追い付かなくなり、体内に乳酸が蓄積され始めるポイントであり、「LT(Lactate Threshold)値」=「乳酸性作業閾値」とも呼ばれます。

 

この「閾値ペース」は、このラインを超えると身体がどんどん動かなくなっていきますよ、というイメージなのですが、これはトレーニングによって向上させることができます。

 

閾値ペース周辺の運動強度でトレーニングを継続することにより、

体内での乳酸処理能力が向上し、乳酸が貯まりにくい身体になっていくというわけです。

 

閾値ペースでのランニングを繰り返すことによって、キツいと感じ始めるペースのラインがどんどん向上していき、以前はキツいと感じていたペースがキツくなくなっていきます

 

ラクに走れるペースが底上げされる感じ。

これ、長距離を走る上でめっちゃ重要ですよね。

 

これをトレーニングに組み込むとすれば、「20~30分間閾値走(テンポ走)」「クルーズインターバル(閾値ペースで行うインターバル)」などが挙げられます。

 

なお、この閾値ペースでのトレーニングを十分に積んだ選手であれば、調子を合わせたレースにおいて60分間程度(ハーフマラソンくらいまでの距離)維持することが出来ると言われています。

 

数値で表せば、

VO2max(最大酸素摂取量)の83~88%

HRmax(最大心拍数)の88~92%

 

・Aさん (サブ2.5)→ 3分21秒/km (VDOT 67)

・Bさん (サブ3.0)→ 4分00秒/km (VDOT 54)

・Cさん (サブ4.0)→ 5分12秒/km (VDOT 39)

 

⑤インターバル (Interval) ペース

 

「インターバルペース」とは“3~5分間継続できるペース”です。

 

そして、運動強度としてはVO2max(最大酸素摂取量)と同等か限りなく近いレベル

代表的なもので言えば、1000m×5本といった練習の時に出すスピードと同じくらいのイメージ。

 

「インターバルペース」で走ることによって期待される効果は、VO2max(最大酸素摂取量)の向上です。

 

VO2maxとは、人間の有酸素能力を表す重要な指標で、

この数値が高ければ高いほど、酸素をエネルギーに変換する能力が高いということになります。

いわゆるマラソンランナーにおける“スピード能力”です。

 

数値で表せば、

VO2max(最大酸素摂取量)の95~100%

HRmax(最大心拍数)の97.5~100%

 

・Aさん (サブ2.5)→ 3分05秒/km (VDOT 67)

・Bさん (サブ3.0)→ 3分41秒/km (VDOT 54)

・Cさん (サブ4.0)→ 4分48秒/km (VDOT 39)

 

⑥レペティション (レペティション) ペース

 

「レペティションペース」とは、“およそ2分間継続できるペース”です。

 

長距離ランナーの練習ペースとしては、最も強度の高いペースであり、一般のマラソンランナーにとっては、この「レペティションペース」で走ることはほとんどないと思われます。

 

この「レペティションペース」で走ることによって期待できる効果は、無酸素能力の向上最大下スピードの向上ランニングの経済性の向上などがあります。

 

「レペティションペース」では、VO2max以上の強度で走ることになるので、有酸素能力だけではエネルギー変換を賄えません

それゆえに、無酸素運動の割合が多くなり、いわゆる“スピード強化”に繋がるというわけです。

 

ここまで聞いて、

「ああ、だったら私にそんな練習いらないや」

と思う人もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。

 

確かに、この「レペティションペース」はマラソンペースからかけ離れたペースなので、実践で使うことは少ないかもしれません。

しかし、「レペティションペース」で最大スピードを高めておけば、

それより遅い「閾値ペース」「マラソンペース」においての余裕度が拡充します

 

これは一般のマラソンランナーにとってもメリットです。

身体の多くの機能を幅広く鍛えておくことには意味があります。

 

もちろんそれほど多い頻度でレペティショントレーニングを行う必要はありませんが、完全に敬遠するのではなく、たまにはレペティショントレーニングにも取り組んでみると思わぬ効果が得られるかもしれません。

きっとマラソンペースで走るだけでは得られない刺激があるし、新たな気付きが得られるかも。

 

数値で表せば、

VO2max(最大酸素摂取量)の105~120%

HRmax(最大心拍数)の100%

 

・Aさん (サブ2.5)→ 1分08秒/400m (VDOT 67)

・Bさん (サブ3.0)→ 1分22秒/400m (VDOT 54)

・Cさん (サブ4.0)→ 1分46秒/400m (VDOT 39)

 

Ⅲ. そのペースで走る意味を理解しよう

 

ふー

とまぁ、こんな感じでいくつもの種類のペースがあります。

 

今回は6種類に分けてみましたが、考え方によってはまだまだ別の分類方法はあるでしょう。

 

しかし、この『ダニエルズ理論』での分類方法は広く世界中で使われており、現在に至るまで色褪せないペースゾーン理論であるので、大いに参考に値するものだと思います。

 

そして、これらの6種類のペースを使い分けた上で、

「このペースで走ることにより、どういった練習効果が得られるのか」

と、意識することが大事です。

 

例えば、疲労を抜くことが目的のジョグを行う際には、ある程度遅めのペースで走るのが適しています。

しかし、そこで「閾値ペース」という乳酸が貯まるほどの速いペースで走ってしまったらどうなるでしょうか。

 

元々の目的であった“疲労を抜く”ということが果たされず、疲労はさらに蓄積され怪我につ繋がりかねません。

これでは本末転倒。

 

マラソン練習は、頑張れば頑張るほど良いというわけではなく計画的に、ひとつひとつの練習に目的意識を持って取り組むことが求められます。

 

「そのペースで走る意味を理解する」

 

それだけで、トレーニングに対する姿勢が変わりますし、トレーニング自体がきっと何倍も面白くなると思います。

 

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